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相続手続きの中で利害関係人の間で争いごとに発展することを、俗に「争族」などと表現します。たとえ訴訟にまで発展せずとも、各々の利益に直接関わる遺産分割協議の際に、意見の食い違いから、その後の関係がこじれてしまう可能性もあります。
こういったトラブルは、遺言があることによってある程度を回避することができます。日本の相続制度上、遺言者の意思は各相続人の個人の意思よりも尊重されるためです。また、銀行口座の解約をはじめとした相続手続きが楽になるというメリットもあります。
こうしたことを理由として、自身の親に、相続に備えて遺言を書いてもらいたいという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事は、親に遺言を書いてもらうことがテーマとなります。
親に遺言を書いてもらいたい場合でも、実際に話を切り出すとなるとなかなか難しいものです。遺言に、「親の死を前提とする」「財産を分配する」という側面がある以上、どうしても後ろめたさが生まれてしまいます。また、お願いをする側の知識も完璧ではないでしょうから、遺言について話題にするだけでも相当なエネルギーが必要となります。
ですが、遺言は、遺言者の意思で書かれていることが大前提となります。「遺言を残す」という形式の面でも、「誰に何を相続させる」という内容の面でも、強制することはできません。そのため、まずはご本人に、遺言書の必要性を考えてもらい、正しい知識を知ってもらうことが必要となります。ですので、お願いする側としても遺言を書くメリット、書かないデメリットを知り、触れづらい話題に備えることが第一歩といえるでしょう。
また、実際に遺言を話題に出す際には、一概にも言えませんが、「遺言を書いてくれ」と直接的に伝えてしまうことは避けたほうがよいでしょう。これを不快にとられ、遺言に対するイメージを悪くしてしまっては本末転倒です。誰しも自身の死後の不安を抱え、遺言の必要性自体は理解できているものですから、直接的な表現は避け、世間話やテレビで相続のことが取り上げられるタイミング等を見計らい、少しずつ話題にしていくのがよいでしょう。
徐々にでもご本人の気持ちが動くのを待ち、気持ちが固まってきた時に初めて、遺言書の書き方等の具体的な話題を持ち出すことをお勧めします。
相続についての会話の中で、遺言があることによるメリット、特に遺言者を書く人についてのメリットをやんわりと伝えることで、遺言についてよいイメージを持ってもらうことは大事です。
第一のメリットはやはり、相続人間の争いごとを避けることができる点でしょう。自身の相続が原因となり争いごとに発展することを望む人はいないでしょう。遺言書があることによって遺産分割協議が必要と無くなります。「争族」の原因の多くは遺産分割協議ですから、「争族」の回避に大きな効果が期待できます。
ただ、なるべく公平な内容の遺言である必要はあります。相続人には遺留分という権利があり、最低限の相続分が保証されています。遺留分を下回る財産しかもらえなかった相続人は、遺留分減殺請求をしてくるかもしれません。争族を避けるには、これを考慮した公平な遺言であることがポイントとなります。
他にも、相続手続きが簡単になり、相続人の手を煩わせることが少なくなるという点を挙げられます。具体的には、戸籍の収集や相続人全員の同意を要する手続き(銀行手続き)等です。人に迷惑をかけたくないという心情をうまく利用しましょう。
親に遺言を書いてもらうには、日常的なコミュニケーションのなかで徐々に遺言への理解を深めてもらうことが大事です。
こうした会話の中で、遺言者にある程度の意思が見え始めたら、専門家へ一緒に相談に行くというのも一つの手です。
遺言の作成に際して、必ずしも専門家に依頼する必要はないのですが、どうしても遺言に関する知識不足が腰を重くする要因の一つであるため、専門家への相談を契機に、具体的な作成に移るのもよいでしょう。専門家の口から説明を聞くことで、遺言を書くメリットについて納得しやすく、子どもから直接遺言書作成を依頼されるよりも作成に前向きになるかもしれません。
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